「あなたの人生がどんなものだったのか。そこにどんな喜びがありどんな悲しみがあったのか、よくは知らない。しかしもしそこに満たされないものがあったとしても、あなたは他人の家の戸口にそれを求めるべきじゃない。たとえそこがあなたにとってもっとも見慣れた場所であり、それがあなたのもっとも得意とする行為であったとしてもだよ」
By「1Q84 BOOK3」村上春樹著
1Q84BOOK3で天吾がこん睡状態の父親に語りかけたシーン。
天吾の父親はNHKの極めて優秀な集金係だった。
粘り強く執拗に代金の回収に勤める。
そのうち集金には幼少の子供を連れていたほうが有利であることに気づき、
天吾を回収業務に連れ出すようになる。
回収率は向上し、どんどんうまくなっていく。
使える経営資源はすべて使いきる。
しかし天吾の母親はそんな父親の元を幼少のころに去っていた。
たとえ自分にうまく出来ることがあったとしても
それが必ずしも他人にとって喜ばしいこととは限らない。
そのことに気づかなくてはならない。
自分の行いには必ず不誠実さが含まれているものと心得たほうが良い。
間違っても自分の仕事は尊いものだ、などとはなはだしい思い違いだけはしてはならない。
誠実なことと不誠実なことに明確な境界が存在しているわけではない。
きっとみなが少しづつ不誠実で、そして少しづつ誠実なのだ。
もしかしたら、私は自分の生計を維持するために
他人の戸口を叩くような行為をするべきではないのかもしれない。
どれほど顧客の経営支援に自信があったとしてもだ。
人の経営に口出しするコンサルティングというサービスは、
「自分は人々をより正しく導きうる」という気違いじみた思想と
常に隣合わせのサービスなのだから。
ではどうすればいいのだろう。
結局それを教えてほしいから戸口を叩いてしまうのだ。
それ以外何ができるだろう?
だからご迷惑をおかけしますが、少しだけ戸口を叩かせてください。
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