営業の件数と成果の関係について-営業の生産性とは?

営業の生産性とは何だろう?

 

それは営業コストに対する契約件数あるいは営業収入ということになるだろう。かけた費用に対する効果。

 

しかしここで重要なのは「コスト」比であって「営業件数」比ではないことに注意が必要。

 

たとえば一人の人が営業する場合に一斉自動送信のFAXDMと飛び込み訪問では時間当たりの実行件数がまったく異なることは明白。

 

ではFAXDMが飛び込み訪問に比べて生産性が高いのか?

 

これは必ずしもそうではない。ここが営業で生産性のデータを取る重要性につながる。

 

これは営業手法による違いだが、一般的に1件あたりの営業の質を高めれば約定率は高まる。

だから営業展開を企画する際のセオリーとして1件あたりの営業の質をもっとも高めた場合ともっとも低くした場合、まずはわが社にとって両極端はどのような営業かということを考えてから企画することが重要。

 

たとえばホームページ制作の営業を考えてみよう。

 

まずは1件あたりの営業の質を極力低くし、件数を増やす側の手法。

時間当たり営業件数がもっとも多いのはおそらくFAXDMかWEB広告だろう。

後者は件数では比較できないが。(コストもデータ収集せねばわからない)。

しかし、これらの約定率が低いことは明らかだ。なぜならこれらが伝達するのは不特定多数に向けられた「こんなホームページが作れる」という単純なメッセージだからだ。

 

では、その正反対の手法は何か?

つまり1件あたりの営業の質をもっとも高めた場合の方法は何か、ということだ。

 

それはおそらくホームページを持っていない顧客を独自に調査して、頼まれてもいないのに先にホームページを作ってしまい、それから営業をかけて作ったのでまずは見てください、というものだろう。後者の約定率の方が高いことも明白だ。しかし当然ながらここまでやっても100%契約にいたるわけではない。

 

だから、その企業にとって最適な営業手法は、その両極端の間のどこか、あるいは組み合わせであり、それを絶えず探すこと=営業強化ということになるだろう。その比較指標が営業の生産性だ。前よりも我々の営業はうまくなっているのか、そうではないのか。それは他社とではなく自社の過去のデータとの比較だ。

 

私たちはついつい営業の件数を高めることが常に企業の契約率を高めるという明確な根拠のない強固な思い込みに縛られている。

営業とは企業が違えば全く成果が異なるもの。

成果はあくまでかけた「費用」との比較で測定せねばならない。

 

では件数のデータが必要ないのか、というとそうではない。

困ったことに?人には感情がある。感情があるから何件やってだめだからもうだめだ、と諦めたくなる。だからあなたが何件やってだめでもそれは我が社のこれまでの営業データからそれは普通のことですよ、と担当者を励ます情報も必要。件数の情報も企業の財産なのだ。

 

営業とは実は企業の総力をかけた高度な情報戦なのだ。

 

なのに隣の営業マンが何をやっているかわからないというのはそもそも論外ではないですか?、という点は当事務所のセミナーでの主要な問題提起だ。

 

 

また読者はもうお気づきかもしれないが、営業手法は業種により向き、不向きもある。 つまり「何を」売るかという点。

 

一般的に顧客ごとに提供する商品・サービスの内容が変わるサービス業や中間工程(いわゆる下請け)を販売する企業ほど1件あたりの営業の質を高める手法が重要になり、既製品を販売する企業ほど件数を高める営業が重要になる。

 

それはそうで、顧客ごとに営業を工夫しても一番肝心な製品が顧客ごとに変えられないのであればあまり意味がないだろう。だから既製品、標準品を販売するメーカーやシステム会社はその商品をできるだけ多くの会社に「知ってもらう」工夫を重視することになる。

 

逆に言うと顧客ごとに提供する商品・サービスが異なる企業にとって営業を工夫するとは、その工夫自体がすでに顧客へのサービスの一部をなしており、どこまでリスクを踏んで先行して無償でサービスを提供するか、という判断が問われているということが分かる。つまり顧客のために自社商品・サービスをカスタマイズするという契約後に必要になる作業の一部を営業段階で先行して行うということだ。だから顧客毎にカスタマイズを要する企業に向いているということになる。

 

プレゼンまで進んでから考えるのか、アプローチ段階で企画書に提案として記載するのか、それともアプローチ段階で先にサービスに取り掛かかってしてしまうのか。

これは固定費の有効活用という視点から考える。いわば人材の稼働率。未活用の人材の有効活用、あるいは時間の使い方・配分を変更する=人の働き方を変えるということだ。営業を変えるにはときに戦略的な意思決定を伴う。

 

先ほどのホームページの例を見ると営業段階ですでにホームページが完成しているわけで、これは顧客の失敗のリスクを低くし、自社のリスクを高めている、という構図になる。その構図は提案を受け取った顧客から見れば一目瞭然で、だからこそ顧客の目を引くのだ。これが営業段階での差別化戦略。そこからここはもっとこうであれば良いとかここはこうしようという議論が始まれば契約が見えてくる。

 

しかし、このような営業は件数を実行できない。だからこそ「標的顧客選び」が極めて重要になってくる。 営業は「何を」売るかということはもちろん大切だけど自社は一体「誰のために」貢献したいのか、それが身の丈にあっているか、

自社の製品・サービスに適合する顧客像を想定し、それを元に必要なデータを具体的にリスト化できているか、ということも重要なのだ。

 

では、当事務所はどうか?

件数を高める営業は少し着手したが、一番駄目な点は顧客に会えていないという事実。

顧客のニーズに触れなければ、事業は進歩しない。

 

顧客に会ってもらえるサービスを作らねば。

そのために営業の質を高める手法もラインナップに加えねば。

 

当事務所にとって営業の質を高めるために何ができるだろうか?

 

考え中。